以前にも書いたことがあるネタなんですが,AdobeRGBって,滅多にお目にかかれません。
カラーマネージメントやICCプロファイルを用いた印刷の話になると,必ず書いてあるAdobeRGB。そりゃ,sRGBより広色域なのは,理解しています。ではありますが,その色域が活かせる被写体って,どこにいるんですかね? 展示会などで,そういうメーカーの方々に対面で個別に質問をしてみると,みなさん「日本には,まずない」と。 さっきまでステージセミナーで,AdobeRGBを使いましょう,って話していた人が,壇から降りてきて話を聞くと,全然違っているわけ(苦笑 メーカーのWebサイトにある解説等を読んでも,より広い色域の説明や優位性は書いてあっても,それが,日本のそこかしこにあるとは書いてありません。技術的な優位性の説明であって,実際に,それが被写体としてあるか,ないかは別問題。 例えば,こういうところ↓に書いてある説明 http://www.microsoft.com/japan/windowsxp/using/digitalphotography/prophoto/colorspaces.mspx 記事としては,Photoshop7の頃ですから,古いです。後半の内容は,今となれば古新聞。Microsoftのような会社のWebサイトにある記事が,すべて正しいとか,すべて今でも通用するかというと,そうじゃない。 さて,ここでいう「印刷」の解釈。 この記事はプロユースらしいので,ここでいう「印刷」とは商業印刷(≒オフセット印刷)と思われます。家庭用のインクジェットプリンタのことではないと当方は受け取っています。 確かに,CMYKをベースにしている商業印刷では,AdobeRGBの方がコントロールがやりやすいと思います。CMYKには,sRGBでは表現できない色域があるわけで,内抱しているほうが作業性がいいでしょう。けど,そんなのアマと無縁の世界。そっちは,そっちの業務用の世界なのですから,そっちでやってもらえばよろし。 補足しておくと,商業印刷用の写真にAdobeRGBを使うといっても,印刷所では,AdobeRGBのまま使っているわけじゃありません。なぜならAdobeRGBをそのままオフセット印刷にかけてもCMYKでは表現されない色域があるから(例:グリーンの端っこ)。AdobeRGBの画像をCMYKのインクが表現できる色域へ加工してから印刷しています。そういう作業の流れにはAdobeRGBの方が都合がいいわけです。商業印刷に関わるプロがAdobeRGBを使うのは,そういう納品先・取引先の事情によるところが大きいと思っています。 前途の展示会でのヒアリングでも,人工物の特定の色域では有効なことがある,と話しておりました。例示すると,プラスチックや金属で,赤やオレンジだと。自然界だと南の島のエメラルドグリーン。キターー(笑)。日本のそこらの景色にはAdobeRGBは,いないわけです。 アタシもいろいろやってみましたが,AdobeRGBの効果を明確に得られることは,まずないですね。日本の景色には,滅多にAdobeRGBサマはいらっしゃらない。 今日,Adobeとデジカメとその関連(プリンタ屋とか)が「AdobeRGB」と言っているのは,SMPTE-240Mという,ハイビジョンの色空間のこと。 別にAdobeが考案したものでも,な~んでもない。 Macユーザーとして,Adobeの社風を知っている当方の見方では,思うにsRGBでは狭いから,CMYKを包含出来る色空間を探してみたら,SMPTE-240Mが転がっていた。 それだけじゃないですかね。あの会社なら,それぐらい,やりかねない。そして,呆れた事に,勝手に「AdobeRGB」なんて呼び出したりして。 こういうところは,Adobeの源であるXeroxとは,大違い(笑 AdobeRGBちゅーと,最近,目に余るのは,ナナオさんでしょうか。 ここ3年ぐらいのナナオさんは,明らかに変わってしまったと感じます。当方の勝手な見方ですが,sRGBモニターが高く売れなくなったので,今度は,AdobeRGB対応モニターという,高いのを売ろう,と。 ナナオがAdobeRGBモニターばっかりになってしまったのは,そういうことだと思っています。 あと,最近では,ナナオさんのモニターで,20型強で売値5万円以下なんてのもあったりします。アタシの知っている人も「ナナオにしては安かった」な~んて,喜んでおります。けど,それ,どうみたって,TNパネルでしょ。安いには,安い理由がある。名前はナナオかもしれなけど。ご本人さんには,そんな事いえないので,言ってませんけどね。昔のナナオとは,ビジネススタイルが違ってきていると感じています。 こういうモノには宗教色というのをアタシは感じてしまうものです。 ええ,まぁ,アタシも古くはMac教の信者でしたから,よーくわかります。(今は,解脱しています。ははは。) Mac教,Windows教,ICCプロファイル印刷教,AdobeRGB教...これは宗教ですから,信者の方は布教活動をするんですよ。これが,ハッキリ言って迷惑(笑 これは,宗教ですから,そう信じているわけですから,アタシなんぞが,ちょっとや,そっと説明したところで,無駄というものです。心の問題ですから。 ニコ爺も,キャノ坊も,似たようなものですが,敵の攻撃はしても,激しい布教活動はやらないので,ニコ爺とキャノ坊は宗教じゃないです。 AdobeRGB教の説に多いのが,広いとか,狭いとか,そういうハナシ。そんなに広いのが偉いというなら,Wide Gamut RGBやProPhotoRGBはダメなのですか?一番広いのは,カメラ生成JPEGで物理的に記録されるsYCCだと思いますよ。可視域の外まであるんですから(笑 広い/狭いといいますが,8ビットでやっている限りは,広くても狭くても256諧調しかないわけです。AdobeRGBなら8ビットで512諧調になるわけじゃありません。 色域が狭いとか,広いの話に限れば,ミニラボプリントは印画紙という特性がありますから,プリンタの色域は狭いです。それじゃ,フロンティア プリントは狭い色域だから,見劣りするのか?(色調の好き嫌いは別として)フロンティア プリントが,そういう意味で,見劣りしているとは思えません。 当方の経験では,広い/狭いとは,別のファクターでプリントの品質の大半は決まってしまうと思っています。 あと,アマの場合,特にですが,AdobeRGBモニターという高級機を買ったんだ。俺はプロ機を持っていて,プロと同じ処理をしているんだ。そういう自己満足もあるでしょう。それは,それで,いいじゃないですか。否定しません。財力のある方が,高級品を買うのは,カメラや写真に限ったことじゃありません。当方が,四の五を言うことではないです。 AdobeRGBは,商業印刷向けにAdobeが,よそから引っぱってきたものです。 アマが自分でプリントする分には,そうそうあるものじゃないと思います。 sRGBでも,AdobeRGBでも,さして違いがないなら,sRGBにしておこう。さして違いがなくても,もしかしたら効果があるかもしれないのでAdobeRGBにしておこう。 この程度の判断基準が,よろしいかと。 今,AdobeRGBをお使いの方は,おそらくRAW撮影をRAW現像ソフトで処理してAdobeRGBを適用するのが多いと思います。カメラJPEGでAdobeRGBを使うのは少数派じゃないかと。 RAW現像なら,sRGBとAdobeRGBの比較は,割と簡単だと思いますので,ご自分で実際に試して,どちらにするかを決めてもらうのがよろしいかと思います。 と,延々と引っぱって「今年出合ったAdobeRGB」です(笑 2件だけありました。 1件目は,PX-5600の実験に用いた「青のお洋服」(スタジオ撮り)。 http://rainbow55.exblog.jp/8558645/ 2件目は,ピクチャースタイルの実験に用いた「エメラルドグリーン風のお洋服」(フォトエキスポのキヤノンブース)。 http://rainbow55.exblog.jp/9709329/ 展示会9の例 この記事では触れませんでしたが,この展示会9の画像は,AdobeRGBにするとお洋服の色の出方が,sRGBとは異なります。AdobeRGBの効果が認められる画像です。AdobeRGBは,ビックサイトにいた(笑 ちゃんと,効果をおさえているのね>キヤノンさん まぎらわしかったのは,これ↓ http://rainbow55.exblog.jp/7814239/ > AdobeRGB ドライバ補正で印刷 風戸えりちゃんの衣装の赤の出方をチェックした時の。 この記事を書いた時は,この通りでしたが,後日,RAW現像ソフトをCapture Oneにしたら,sRGBでも,思ったような赤になってくれました。AdobeRGBよりソフトの違いだったと,今となれば思う次第です。この例は,AdobeRGBによる明確な効果といえません。 AdobeRGBに意味がない。と申し上げているのではありません。 当方が言いたいのは,メーカ等の宣伝文句にあるように,AdobeRGBがその効果を発揮できる被写体は,ごく限られているということです。 当方の場合は,今年1年間で2回だけ。 AdobeRGBを使えば,別の世界が広がってくるとは思えず,sRGBが著しく見劣りするとも感じられないのです。 ましてや,AdobeRGB対応モニターに買い換えるなんて,とんでもない。
by rainbow-5
| 2008-12-28 21:45
| 日記
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