なんか,あるヒトへのメールみたいなものですが,自分自身の情報整理の意味も含めて,このblogに書いておく事にしました。
テーマは,キヤノンのE-TTLII ストロボ。 キヤノンの場合,デジカメになって,フィルム時代末期のレンズ・アクセサリー類のほどんどは装着できるわけです。(何度か書いていますが)装着できるのと,使い物になるのは別問題。 ストロボも,この法則が当てはまります(笑 以前,EOS-1D MK2を買った時,ストロボはフィルム時代に使っていた550EX(E-TTL機)で,いいや,と思ったわけです。 機種的には,MK2と同時発表(だったと思う)の580EXがあったわけですが,550EXが使えるので,そのまま使おうとしたわけです。 ところが,実戦投入してみると,これが,全然ダメ。 傾向としては,主要被写体がアンダー。デジカメなので露出制御は,フィルムのリバーサルのようなもので,かなりシビア。さらに当時は(RAW撮影でなくて)カメラ生成JPEGで撮っていましたから,画像の明るさは,敏感でした。 その年の東京モーターショーの直前に思い切って580EXを購入。アタシにしては,珍しくぶっつけ本番で使ったわけですが,550EXに比べよくなりました。 モーターの後に,E-TTLとE-TTLIIの違いを調べてみたら,これが別物だったわけです。 キヤノンの調光方式↓ 1.E-TTLII: プリ発光記憶式評価調光/レンズ距離情報活用 →主被写体エリア加重平均調光 580EX/EOS-1D MK2以降 2.E-TTL: プリ発光記憶式評価調光 380EX/EOS 55以降 3.TTL自動調光:フィルム面反射測光リアルタイム調光(A-TTL含む) EZ系 キヤノンの分類では,1.2.をAタイプカメラ,3.をBタイプカメラ(EOS-1Nなど)としている。 説明がしやすいようにE-TTLIIでない,最初のE-TTLのことをまず書きます。今さらA-TTLまで戻っても仕方ないし(笑 余談ですが,TTL調光/A-TTLのEZ系はフィルム面反射測光なので,デジカメにはフィルムがないので,オート調光はダメなのよね~。当然ですが,マニュアル発光ならEZ系もデジカメで使えるには使えます。 E-TTLはプリ発光方式なので,デジカメでも使えます。 E-TTLはプリ発光で得られた測光を評価測光方式で演算処理します。極端に明るい部分は加味されません。さらに「ピントがあった箇所が主要被写体である」と考えて評価調光演算をします。これは,単に構図上のハナシ。 ところが実際のカメラと主要被写体の間には,距離というものがあって,発光量は距離で計算する必要があるわけですが,E-TTLでは,これが外部オートの世界。 さらに当方の撮影スタイルは,いわゆる親指AFを使っており,AF作動・ピント決定→構図のためにカメラを振る→シャッターレリーズの流れです。 つまりは,ピント合せを行った位置と実際に撮る主要被写体の位置がズレるわけですから,E-TTLが想定している撮り方(=設計方針)とは違っているわけです。 こんなことをやっていれば,E-TTLの550EXと1D MK2を組み合わせても,うまく行く筈がありません。 キヤノンからみれば,ピント決定後に構図を振るのは,E-TTLでは対応できない。主要被写体と背景の輝度差が大きい(一般的には背景がすこぶる明るい)場合は,E-TTLでは対応できない。そのために,FEロック(+調光補正)や平均調光+調光補正がある。そういうことなんだと思います。 デジカメなので撮ったその場で結果は見れますから,まぁ,そんなやり方でも,いいのですが,手間がかかるなんてもんじゃない(笑 E-TTLIIは,一言で言うと,上記E-TTLの欠点であった距離と調光制御方式(主要被写体の推定方法)を改善したものです。 メイン発光量算出の演算に際して,レンズより得た距離情報も活用し,主要被写体のゾーニングを推定します。(ピントがあっている付近を主要被写体と考える) これをキャノンは,主被写体エリア加重平均演算と呼んでいます。 E-TTLIIでも,親指AFで「ピント確定後に構図を変える」ことが感心しないのは変りありませんが,全然違った構図になるわけではありませんから,E-TTLよりは格段に良くなります。 また,当然のことですが,距離情報を持っていない古い設計のレンズの場合は,レンズの距離は勘案されません(出来ません)。 当方の手持ちレンズですとEF50/1.4だけが距離情報を持っていません。 まぁ,そういうのはあったりしますが,デジカメは主要被写体/背景共々,露出に関して敏感ですから,E-TTLでなくて,E-TTLIIストロボということになってしまうわけです。 当方なんて,最初は旧型品が装着できるので,いいかと思い,いざ使ってみたらダメだったので,結局,新型品を購入。 毎度のことながら,キヤノンの術中に,はまっておりまする(笑 そういうわけで,E-TTLストロボは,キヤノンデジ機でも作動しますが,使いこなしが大変です。カメコは,E-TTLIIがよろしいかと。 以上が,当方の経験と思い込み。 ところで,キヤノン見解は,やや違っています。 E-TTLも,E-TTLIIも,ストロボは同じと主張しているからです。(1DMK2,MK3の取説でいうと「このカメラでは、どのEXスピードライトを使用しても、E-TTLII自動調光撮影を行うことができます」の箇所) E-TTLIIで改良があったのはボディ側の制御であり,ストロボ側の機械・機構は関係ありません。E-TTL or E-TTLIIは,ボディ側で決まってしまい,ストロボ側はどっちでもいい。(ワイヤレス機構は除く) 確かに,ボディ側からみれば,ストロボから受信する信号,ストロボへ送信する信号共々,E-TTLも,E-TTLIIも同じですから,そういうことになります。(色温度情報通信機能はE-TTLIIの機能とは別のものになります) ボディとストロボの組合せマトリックス上,次のようなことがあるわけです。 A. 550EX+EOS-1v →E-TTL B. 580EX+EOS-1D MK2 →E-TTLII C. 580EX+EOS-1v →E-TTL D. 550EX+EOS-1D MK2 →E-TTLII A~Cの組合せは,理解の範囲内。 問題は,D.の場合。この組合せでも,E-TTLIIだとキヤノンはいうのです。EXストロボ+1D MK2以降のEOS DIGITALの場合,み~んなE-TTLIIというのがキヤノンの説明。EOS 20D以降,EOS 5D以降,EOS 1D MK2以降のカメラと550EXを持っている場合,E-TTLIIだけに期待して580EX I型,II型を買うのは意味がない,とのこと。 ではありますが,1D MK2における当方の感触は,B.とD.では明らかな差があったものです。 当方の経験値とキヤノン見解に違いがありますので,一応,記しておきます。 以下は,いつもながらの感想とか,メモとか。 ●E-TTLIIの誤解 よくあるのが「距離情報を持っていない古いレンズだとE-TTLIIは機能しない」というもの。 このケースでは,距離情報の取得方法に違いはあるが,E-TTLIIは,そのものは機能する。 距離情報はレンズから得るのでなく外部オートで取得する。だって距離が,わからなかったら,発光量の決めようがない(笑 レンズの距離情報を使えば,より精度の高い演算が出来るというだけであり,処理そのものが出来ないわけではない。 さらにE-TTLIIは,距離情報だけで制御しているのでなく,主要被写体の推定ロジックによるところが大きい。特にE-TTLの欠点であるAFフレーム連動がなくなるのは大きい。従って,距離情報を持っていない古いレンズだからと言って,E-TTLでも,E-TTLIIでも同じにならない。 ●評価調光/平均調光切り替え 次のは,すべて同じ機能の説明ですが,年代によって,文言が変わったり,説明の仕方が変化しているわ(苦笑 ・EOS-3 CF-14 日中シンクロのストロボ調光自動低減コントロール 0:する 自然な日中シンクロ描写がオートで得られます。 1:しない 夕日など強い逆光下での人物撮影で、人物が露出アンダーになるのを防ぎます。 ・EOS-1v C.Fn-14 「日中シンクロのストロボ調光自動低減コントロール」(取説の文言) 「ストロボ発光の高輝度自動低減コントロール」(後日改訂されたWebサイトでの文言) 夕日など強い逆光下での人物撮影で、人物が露出アンダーになるのを防ぎます。 ・EOS-1D MarkII(E-TTLII初号機) C.Fn-14 0:暗い場所から日中シンクロまでのストロボ撮影を、全自動で行うことができます。 1:エリアAFフレームの領域を平均調光します。自動補正は行いませんので、状況に応じて調光補正する必要があります。FEロック時も状況に応じて調光補正する必要があります。 ・EOS-1D MarkIII C.Fn II-4 0:評価調光 暗い場所から日中シンクロまでのストロボ撮影を、全自動で行うことができます。 1:平均調光 測光領域全体で平均的に調光します。自動補正は行われませんので、状況に応じてストロボ調光補正を行ってください。また、FEロック時も状況に応じて調光補正を行ってください。 ・キヤノンWebサイト「EOS DIGITALのカスタム機能活用術」より 標準では、プリ発光記憶式評価調光になっており、暗い場所から日中シンクロまでのストロボ撮影をカメラ任せの全自動で行うことができます。 平均調光 測光領域全体で平均的に調光します。外部調光ストロボ使用・適切なストロボ露出補正が身についている方には便利な機能です。 ●評価調光(自動低減コントロール)の効果 世間一般でいうところの「キヤノンはストロボの効きが悪い」のは,評価調光によるところが大きいと思う。 カメラマンの腕が悪いのでもなく,カメラやストロボが不良品なわけでもない。キヤノンの案内によれば「自然な雰囲気の自動ストロボ撮影」(=ストロボ臭い写真にしない。目に見えている感じをそのまま写真にする)なので,そういうものなの。キヤノン作例↓ http://cweb.canon.jp/camera/flashwork/functions/reduction/index.html キヤノン自身によるストロボ効果の作例写真が,これ↑ですから(笑 ●平均調光の効果 当方が撮るものでは,フィルムカメラ(EOS-3,1v)や1D MK2で,明確な効果は得られなかった。 1vの説明書には「夕日などの逆光」ってあるけど,そういうシーンなら自動調光よりマニュアル発光の方が安定していいと思う。 ただ,1D MK2→MK3で説明に変化がある。 1D MK2→エリアAFフレームの領域を平均調光します 1D MK3→測光領域全体で平均的に調光します MK2のエリアAFフレームとは,スクリーンにある45測距点の外側の楕円状のエリアのこと。(中央重点測光エリアに類似) MK3の測光領域全体ということは,構図100%すべて,ということ?そうならば,MK2とMK3では仕様に変更があったということだ。 ●FEロック 効果はある。(スポット測光と同じ要領なので,通常は調光補正と組み合せて使う。FEBも有用。) けど,展示会で,FEロックが使える機会は,そうそうない(笑 ●調光制御の考え方 キヤノンのカタログ等には「(E-TTL/E-TTLIIは)定常光を活かした自然なストロボ撮影を実現します」とあるので,そういう設計方針なのだと思う。 人物など主要被写体をクッキリとさせたい場合は,キヤノンでは,ストロボを強く当てる必要があると見ていいだろう。 だし,実際,そうしないとダメ。 調光補正でプラス補正が必須。 対するニコンは,ニコン自身が書いたものを見た事がないので推察になってしまうが,ユーザーさんの経験談などからストロボ光優先。つまり主要被写体をハッキリとさせる設計方針のなのだと見ています。 本職さんの世界で言うなら,キヤノン→コマーシャル向け,ニコン→報道向け,って,ところか? 一長一短があるので,いい悪いを論じるより,メーカーの特徴や設計方針を理解した使いこなしをした方が近道かと。 ●E-TTLのEは、 英語のEvaluative(評価)の頭文字をとったものです。 AF撮影のストロボ露出は、常に撮影時の絞り数値(自動あるいは手動で設定された絞り数値)を基準に、AFフレーム連動被写体重視のE-TTL自動調光で制御されます。(EOS-3取説より) この取説を逆に読むと,E-TTLでは,AFフレームから外れると(外すと)調光は破綻する(苦笑 取説には「通常のAE撮影と同じ感覚で簡単にストロボ撮影を行うことができます」とあるが,AEロックと同じ要領でE-TTLを,デジカメで使ったら,メタメタになって当然。 こんな程度でもフィルムの頃は,まぁまぁ使えたもんだ。もっとも調光補正はしていたか。 ●距離情報を持っているEFレンズの一覧 キヤノンWebサイトで見つけることが出来なかった。(以前は,あったと思う) 紙媒体カタログでは「スペック一覧」のページに明記されている。 ●最適な露出モードは,P? 経験的にはプログラムAEの肌色が最良。 ではあるが,プログラムAEでは絞りの制御が自分で出来ないので,困ったことに。 ボケ具合が関係ない場合は,プログラムAEが一番よかったりする。(露出的に)背景まで,出来る限り写し込もうと努力をしている気配あり。 ●後継機の互換性 580EX II型や430EX II型などの現行製品E-TTLII対応ストロボは,古いカメラ(EOS-1v,EOS-1N等)でも使える。 調光は,そのカメラ毎のものになる。ex. EOS-1v→E-TTL,EOS-1N→A-TTL/TTL ●スピードライトブラケット装着によるAFのズレ キヤノン純正品のスピードライトブラケット(SB-E1)の説明書に明確に書いてある。 AF補助光等の位置関係が変わってしまうので,AFでズレが生じる場合がある。 最初のさの字から,ブラケット付で,設計・製造・検査されているならハナシは別だが,そうじゃないのだから,ある意味,仕方ないわね。それがイヤならブラケットは使わなければよろしい。ブラケットを使うなら,AFはちょっとガマンする。 ●当方の感想 貼った写真は,1D MK2+550EXによるもの。左側が,1D MK2購入後,初めて撮った展示会での撮影原版。 随分前のものなので,久しぶりに見た。これがキヤノンの言うところの「自然な雰囲気の自動ストロボ撮影」。確かにストロボを使っているとは思えない雰囲気(笑 550EXの画像は,みんなこんな調子ですわ。 (ストロボで人物を上げるのとは状況は違ってしまうが)右側に明るさを見られる範疇で,今回調整した画像を載せてみた。改めてやってみると,明るさはダメだが,色温度は,AWBがそこそこ追従している雰囲気。 E-TTLというのは,フィルムだったから通用した手法だったのだと思う。 露出やピントなど,何事においてもシビアになるデジタルで破綻したのは当然。 (フィルム時代も含めて)先進EOSシステムが,一度たりともニコンに追いつけなかったのが,ストロボ。たしかニコンはCPU内蔵AFレンズの頃からレンズの距離情報を活用していたと記憶(蓑も同様だった筈)。距離情報は,E-TTLIIで,やっとこさ。 さらにニコンはメーターがRGBになっているので,それも活用していると思われるしね。 ストロボは,今でもニコンとキヤノンの差は大きいと,ストロボが主光源であるカメラ小僧は,しみじみと思うのでした。 ■参考リンク ・スピードライト550EX http://cweb.canon.jp/camera/eos/accessary/detail/2261a001.html > ※E-TTL II自動調光対応カメラ:EOS-1D Mark II、EOS 20D、EOS 7s、EOS Kiss 7 > ※E- TTL自動調光対応カメラ:EOS-1V、EOS-3、EOS 7、EOS 55、EOS Kiss 5、EOS Kiss Lite、EOS Kiss III L、EOS Kiss III、NEW EOS Kiss、EOS IX E、EOS IX50、EOS-1Ds、EOS-1D、EOS 10D/D60/D30、EOS Kiss Digital、EOS D2000/D6000 ・EOS DIGITALで使用可能なレンズ・外部ストロボ・その他アクセサリーについて http://cweb.canon.jp/e-support/qa/1055/app/servlet/qadoc?qa=042750 ・スピードライト430EX II システム http://web.canon.jp/Camera-muse/tech/report/200808/report.html ・EOS-1v 高精度AE http://cweb.canon.jp/camera/eos/lineup/1v/features-ae.html ・EOS DIGITALのカスタム機能活用術 http://web.canon.jp/Camera-muse/tech/report/200508/report.html ■モデル 丸山真子(講談社フェスティバル2004) 2009.2.9 一部誤記訂正
by rainbow-5
| 2009-02-07 19:06
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