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Re: 第2回 sRGBとAdobe RGBを理解する
 Web媒体に載っていた記事に,いちいち反論するのも大人げない,とは思ったのですが,明らかな誤りやトリックを使っており,突っ込みどころ満載。
 アマを相手にしたHow toの記事とは言え,いくらなんでも,こりゃないでしょ。
 これ↓
・今日から始めるデジカメカラーマッチング:第2回 sRGBとAdobe RGBを理解する
http://camera.itmedia.co.jp/dc/articles/1009/01/news030.html



 この記事は第2回であり,第1回も拝見しましたが,「正しい色」とか,「カラーマッチング」とか,よくわからないタームが登場しますが,それは,今回は触れないでおきます。

> 色再現の正確性は視野角による影響が少ないが、IPSは最も有利で
 「色再現の正確性」と「視野角による影響」って,どういう相関があるのでしょうか?
 視野角による影響が少ない方が,色再現は正確になるという事?
 ディスプレイを斜め方向から見た場合の視認性は,確かにIPSパネルの方が優れていることが多いです。けど,ディスプレイって,斜めから見るものなんですかね?ふつーは,正面ですよね。そりゃ,斜めから見る場合もあるとは思うけど,それが主だとは思えんデス。
 それとも,このライターさんは,ディスプレイをいつも斜めから見ているんでしょうか?

> Adobe RGBは、その名の通り米アドビシステムズが制定した色空間
 言葉の揚げ足とりになってしまいますが,米アドビシステムズが「制定」したというのは,いかがなものか?
 Adobe RGBっていうのは,別の用途にあった規格を米アドビシステムズが流用して,Adobe RGBって名付けてしまったもの。制定と書かれてしまうと,米アドビシステムズが一から作ったような印象を与えます。
 他のライターさんは「米アドビシステムズが提唱」と書いているのが多いですな。

> より豊富な色で再現したい場合にはAdobe RGBを利用する方が有益
 sRGBよりAdobeRGBの方が,色がたくさんある。と読み取るのが,ふつーでしょう。
 そんなこと,ないってば(大笑
 sRGBも,AdobeRGBも,表現可能な色の数そのものは,同じです。確かにマッピングした時の空間は,AdobeRGBの方が広いです。でも,広い=多いじゃないんだなぁ。なぜなら,どちらも8ビットなら256階調であり,AdobeRGBの方は,密度が広くなっているだけだから。
 こういう風に書いてあると,これを読んだアマの詳しくない人は,AdobeRGBの方が偉いんだ。と,思ってしまうわけ。

> ここで1つ問題。Adobe RGBの色空間を持つ画像をsRGBしか表現できないディスプレイで
> 表示した場合、どのようになるのだろうか

 ハーイ,センセイ!
 カラーマネージメント対応の画像ソフトで表示すれば,AdobeRGB対応ディスプレイで見た時と,おおむねと同じような色合いになると思いまース。
 但し,当該sRGBディスプレイの表現可能な色域の中で,近似した色合いになるので,まったく同じになるわけじゃないと思います。

> は何色になるだろうか。
>  正解は「深い緑」なのだが

 はぁ?
 それはAdobeRGBならば。ね。
 前提条件を明示しないでおいて,正解とはね(苦笑

> RGBのそれぞれの数値はあくまで相対的なものであり、絶対的な色を表現した
> わけではない

 確かに,そのとおりです。
 ここでの論旨は,RGB値が示す値にはズレがあるということなのだと思いますが,それならば,色の方を同じにして,RGB値が異なるような例示の方が,いいのでは?
 そんなことを思っていたら,ここ↓に話を持って行きたかったわけだ。
> これが実際の画像になると、写真によって色ががらりと変わってしまう事態が起こり得る
 だから,同じRGB値で例示したものを載せたわけか。
 けどさ,sRGBの方が地味で,AdobeRGBの方を深い緑にしているのは,AdobeRGBが良くて,sRGBが悪いという暗示なのか?アタシが考え過ぎ?(笑

> Adobe RGBモードで撮影した画像をsRGBの色域しかサポートしない液晶で表示すると、
> 意図した色とは異なる色、たいていは地味な色に表示されてしまう

 厳密に言うと,この言い回しは,間違っています。あるいは,言葉が足りない。
 「Adobe RGBモードで撮影した画像をsRGBの色域しかサポートしない液晶で『カラーマネージメント非対応の画像閲覧ソフトで』表示すると、意図した色とは異なる色、たいていは地味な色に表示されてしまう」
 が,適切な言い方でしょう。
 話を簡単にするためだと思われるのですが,ディスプレイが,AdobeRGB対応機か,sRGB機かだけになってしまっていて,画像を表示するソフトウェアがAdobeRGBに対応しているか,どうかが抜けているんですよ。
 ハードウェアだけの話になってしまって,ソフトウェアを外してしまったのは,この場合,無理があると思いますわ。

> 2枚の写真はいずれもNEX-5にてRAW撮影し、付属ソフト「Image Date Converter SR」を
> 使って現像したものだが、左(sRGBモード)と右(Adobe RGBモード)ではわずかながら
> 色味が異なっている

 この画像(290×193ピクセル)をsRGBのディスプレイで,見比べると,確かに,AdobeRGBの方が,地味に見えます。
 Webブラウザは,WindowsのIE,Firefox(カラマネ設定済),Safari。この画像(290×193ピクセル)をローカルディスクに保存してPhotoshopで見てみましたが,同様です(=右の画像の方が地味)。
 カラマネを,わかっている人なら,ここで,おかしいと思うハズ。
 この290×193ピクセルの両画像には,ICCプロファイルも付いていませんし,Exifも付いていません。すなわち,ただのRGBデータなんです(大笑
 (今現在のデジカメデータとしては)AdobeRGBの画像というのは,プロファイル付き,もしくはExif付きで扱うものであって,ただのRGBデータにしちゃうなんて。
 そんなことをしたら,ディスプレイがsRGBじゃなくても,右側は,地味ですがな。こりゃ,だまし討ち(笑

 NEX-5付属ソフト「Image Data Converter SR」に詳しくありませんが,このソフトって,ICCプロファイルも,Exifも付けない画像データを吐き出すんですかね?RAW現像のソフトで,そんなものがあるとは思えないので元々は付いていたものを,ライターさんが,わざわざ外したのだと推察します。
 なにが言いたいかというと,これは明確な意図がある,と受け取るのが自然でしょう。
 この条件の場合,画像閲覧ソフトの種類によって,この2枚は違って見えたり,同じように見えたりする筈ですが,データに細工を施して,どのソフトでも違って見えるようにしています。読み手は詳しくないだろう思って,バカにしているよね。

 この2枚の画像はリンクになっていて,リンク先は800×532ピクセルの画像になっています。
 先に書いてしまうと,リンク先の800×532ピクセルの画像は,ICCプロファイルは付いていませんが,Exifが付いています。左の画像の色空間はsRGB。右の画像の色空間はオプション(=sRGB以外=AdobeRGB)になってました。
 文脈からいくと,この画像はカメラ生成JPEGではありませんが,(カラーマネージメント的には)純正RAW現像ソフトを使ってカメラ生成JPEG見合いになっているような感触です。
 290×193ピクセルの画像は,な~んも付いていないのに,800×532ピクセルの画像は,Exif付きとは,これいかに?
 それはいいとして,この2枚を同じく,sRGBディスプレイのWindows機で見てみたのが,これ↓
・IE
 右の方が地味。
・Firefox(カラマネ設定済)
 右の方が地味。
・Safari(アプリケーションレベルでカラマネ対応。ということになっている)
 右の方が鮮やか。
・Photoshop
 左右ほぼ同じ(プロファイルが付いているような振る舞いをする)
・キヤノン DPP
 左右ほぼ同じ(AdobeRGBの画像を認識する)

 IEは,カラマネ未対応なので,こうなって当然。
 Firefoxは,カラマネ設定済みだけど,ICCプロファイルしかカラマネ対象とならないようです。Exifしか付いていない,今回のケースだと抜けてしまうので,こうなっちゃう。Photoshop7の頃(だったと思う)と同じような挙動。
 Safariの場合は,プロファイルが付いていないので,調整幅の見当がつかないので,標準的な値でディスプレイプロファイルとの差を上げただけと思われます。
 PhotoshopとDPPは,カラマネ対応なので,ほぼ同じになったわけ。(だからと言って,右のAdobeRGBの画像が,画像本来の色とは限らない。このケースでは,画像を見ているディスプレイが,sRGB機なので,ほぼ同じになったまで)

 記事では「わずかながら色味が異なっている」としていますが,実際にはソフトウェア次第で,色味が違っていたり,同じようだったり。
 ま,カラーマネージメント対応ソフトに限れば,同じような色味になって当然なんですけどね。

 この記事は,入門者向けだから,そういうややこしい話はナシ。
 また,限られた紙面(と言っていいのか?)の中では,エッセンスだけしか書けない。
 そういう事情があるにせよ,ちょっと強引じゃありません?
 初心者向けだというなら,丁寧に,くどいぐらいに説明した方がいいと思います。肝心なところ飛ばし過ぎ。

 というか,デジカメプラスのような媒体で,カラーマネージメント近辺の記事を扱う必要があるんですかね?
 この連載の企画意図が,実はよくわかっていなかったりしますが,もし本田さんが書いていたら,違っていたと思うけどなぁ。
 カラーマネージメントって,専門性がすごく高いので,編集部の方も,ライターさんの記事の検証が出来ないんじゃありません?そんなものを載せることもないと思ったりもして。
 広告とかの関連があって,AdobeRGBディスプレイの記事も必要なのでしょうが,それならばそれで,載せるなら,もうちょっとシッカリした内容にして欲しいものだと思います。

◇関連リンク
・よくある誤解(2010.3.8)
http://rainbow55.exblog.jp/13046913/
・Photoshopのロジック(2008.12.29)
http://rainbow55.exblog.jp/10012096/
・ITmedia、デジカメ愛好家向けのWebサイト「デジカメプラス」をオープン
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/20100401_358413.html
by rainbow-5 | 2010-09-02 21:14 | 写真関連メモ


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